外科矯正とは
- 外科矯正とは、歯だけではなく骨格的な要因が大きい場合に、
通常の矯正歯科治療に加えて、手術により顎の骨を動かすことで、噛み合わせを改善する治療法です。 - 例えば
- など、歯ならびだけの矯正治療では改善が難しい、骨格的な要因が生じている場合に、
顎変形症治療として、外科手術を併用し治療を行います。
- 顎変形症とは、反対咬合・上顎前突・開咬・下顎骨の偏位などで、上下顎のアンバランスが原因となる噛み合わせのことです。
通常の矯正治療における歯の移動には、ある程度の限界が存在します。
噛み合わせのズレが歯の移動の限界を超え、矯正治療だけでは改善が困難な場合には、外科的な手術を併用して治療を行います。
外科矯正の治療の流れ
- ①初診相談(30~60分)
口腔内診査、口腔内写真、口腔内スキャナーを用いて資料作成し、それらを元に、現在の歯ならび、顎の状態、外科矯正が適応かどうかの説明を行います。
- ②精密検査(60分)
レントゲン・歯型・写真など通常の精密検査に加えて顎機能検査(顎の運動検査や咀嚼筋の筋電図)も行います。
- ③診断(30分)
精密検査の内容を踏まえて、外科手術の方法を含めた治療方針や費用・治療期間、メリット・デメリットの説明をさせていただきます。
- ④口腔外科受診
手術は、市中病院や大学病院の口腔外科で行います。当院で紹介状をお渡しいたしますので、手術を行う口腔外科を受診して頂きます。
- ⑤術前矯正治療(月1度30~60分)
手術までの期間は、大体1~2年程度ですが、口腔内の状況(不正咬合の程度)で前後します。術前矯正は、事前に予測した手術後の顎の状態に合わせて並べるため、一見すると一時的に歯ならびが悪くなったり噛みにくくなったりすることがあります。
- ⑥手術日の決定
手術を行う口腔外科に再度受診して頂き、手術日程を決めます。
- ⑦手術・入院
術後の入院は大体1週間~2週間程度ですが、入院期間は術後の状態により個人差があります。また病院によっても異なりますので、事前に口腔外科を受診される際にお問い合わせください。
- ⑧術後矯正(月1度30~60分)
術後矯正の期間は、手術後大体半年~1年程度ですが、口腔内の状況によって前後します。
- ⑨保定観察
保定期間は2年~3年程度で、通院頻度は3~6ヶ月毎になります。
術前矯正の必要性
- 術前矯正を行う目的は、手術後の噛み合わせの安定化です。
- 治療開始前より受け口や出っ歯が一時的にひどくなることがあります。
術前矯正を行わずに、いきなり外科手術を行い、骨のずれを治すと、手術後に噛む位置が変わり上手く噛むことが出来ません。
噛む位置が安定しないと、手術で動かした骨がずれ、後戻りする可能性があります。
外科矯正のメリット
- 歯の矯正治療だけでは改善できない症状にも対応できます。
- 骨格不正が原因で物が噛めないことや、滑舌や発音の悪さが改善されます。
- 口元だけでなく、顔立ち(顔のバランス)にも変化が期待できます。
外科矯正のリスク
外科矯正の費用
- 健康保険の適用となります。
高額療養費制度を利用することが出来ます。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、1ヶ月間で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
上限額は人によって違います。下記の表を参考にしてください。
※入院時の食費、衣類や差額ベッド代等は含みません。
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) | |
---|---|---|
ア | 年収約1,160万円〜 健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超 |
252,600円 +(医療費-842,000)×1% |
イ | 年収約770万円〜約1,160万円 健保:標報53万〜79万円 国保:旧ただし書き所得600万〜901万円 |
167,400円 +(医療費-558,000)×1% |
ウ | 年収約370万円〜約770万円 健保:標報28万〜50万円 国保:旧ただし書き所得210万〜600万円 |
80,100円 +(医療費-267,000)×1% |
エ | 〜年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 |
57,600円 |
オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
- 25歳《年収370万〜770万円》(3割負担)
-
《例1》
医療費が100万円で、窓口で支払う額30万円
80,100円+(100,000-267,000)×1%=87430円のため21万程度が返ってきます。
《例2》
医療費が160万円で、窓口で支払う額48万円
80,100円+(160,000-267,000)×1%=93430円のため39万程度が返ってきます。
よくある質問
- Q1. 高額療養費の支給申請はどうすればいいですか?
- ご自身が加入している医療保険に高額療養費の支給申請書を提出することで支給を受けられます。ご加入の医療保険によっては、支給申請の連絡がくるところや、自動的に高額療養費を口座に振り込んでくれるところもありますので、詳細は加入している医療保険に問い合わせてください。
- Q2. 医療費控除制度とは違いますか?
- 医療費控除とは、支払った医療費(審美目的以外の自費も含む)に対して、一定の金額の所得控除されるもので、税金が減額ものです。そのため、別の制度になります。
- Q3. 家族と合算することはできますか?
- 同一の健康保険に加入している家族は合算することが可能です。しかしながら、69歳以下の方は各病院での支払いが1ヶ月の合計が21,000円以上のものだけが対象になります。
- Q4. 支給申請はいつまでさかのぼって行うことが可能ですか?
- 支給をうける権利の消失期限は診療を受けた月の翌月の初日から2年です。そのため、2年程度は過去にさかのぼって支給申請することができます。
- Q5. 支給はいつ頃されますか?
- 加入している保険によって違いますが、数ヶ月かかる場合もあります。そのため、金銭的に余裕が無い場合は、後日還付される金額を担保とし融資を受ける制度や還付額を見越して自己負担額のみを支払いする制度などがあります。前もって加入している健康保険や手術を受ける病院の医事課に相談してみてください。
顎変形症で手術を受ける方は基本的に手術をする病院で手術をする時が対象になります。
手術前後の矯正費用の自己負担が1ヶ月間で21,000円以上(医療費7万円以上)になる場合は合算できる対象になることがありますが、手術する同月で21,000円以上になることは殆どないため、基本的には手術をうける病院での支払い費用のみが対象になります。
また、手術する月以外の口腔外科の治療費や矯正治療費は限度額を超えることがないことが殆どのため、顎変形症のみでは対象になりません。